全世界で23億人以上が利用するFacebook。ここから発行される仮想通貨「リブラ(Libra)」が連日話題になっています。
しかし、アメリカを中心に、世界の政府のリブラに対する評価はネガティブなようです。一体何が問題なのでしょうか。
要点
G7に参加した各国首脳やアメリカの上院議員など、多くの政治家がリブラに対し「信用できない」と評価しています。その理由は何でしょうか。
リブラとは?
リブラとは、マーク・ザッカーバーグが運営するSNS「Facebook」が発行する仮想通貨です。
ビットコインなど従来の仮想通貨より価格が変動しにくいようにシステムが組まれています。
世界共通で利用されているFacebookとともに、仮想通貨も流通させようというザッカーバーグ氏の狙いがうかがわれます。
Facebookに投稿するついでにリブラの取引もできれば、ユーザーにとっては何よりも扱いやすいものになり、投資による収益も狙いやすいでしょう。Facebook上でリブラの値動きや動向などの情報共有もできるかもしれません。
Facebookからは、リブラ用ウォレット「カリブラ」も発表されており、Facebookなどで利用可能とのことです。
2020年にリブラ対応の取引所の設立が予定されているなど、具体的な計画が次々に明かされており、「第二のビットコイン」と呼ばれるほどに注目されています。
リブラはなぜ批判されている?
しかし、Facebookの本拠地であるアメリカでは、複数の政治家によるリブラ批判が報じられています。どのような理由でしょうか。
民衆党の上院議員であるSherrod Brown氏は、Twitterでこのように主張しています。
Facebook’s cryptocurrency, Libra, is a recipe for more corporate power over markets and consumers, and fewer and fewer protections for ordinary people. https://t.co/eRiJYUQZOq
— Sherrod Brown (@SenSherrodBrown) June 26, 2019
Facebookの仮想通貨、リブラ、これは市場や消費者の手に負えないぐらいの企業権力を作るレシピであり、一般の人々を守る機能は全くもって考えられない。
また、共和党の上院議員であるMartha McSallyは、16日の上院聴聞会でリブラについてこのような意見を述べている。
自分のこともちゃんとできないで、新しいビジネスモデルを始めようというんですか。
出典:https://www.reuters.com/article/us-facebook-cryptocurrency-senate/facebook-should-not-be-trusted-with-crazy-cryptocurrency-plan-senators-idUSKCN1UB174
リブラへの批判は17~18日にフランスで行われたG7でも展開され、マネーロンダリングやデータ保護などの懸念、最大レベルの規制が必要であるなど、ネガティブな主張が終始語られています。
多くの国の政府が、リブラに対し否定的であることが浮き彫りになっています。
根本理由はFacebook自体への不信感か?
リブラが批判されるのは、仮想通貨自体のシステムではなく、発行元であるFacebookの体制に問題があるからとされています。
2018年はFacebookにとってスキャンダルまみれの1年でした。3月にはイギリスのコンサルティング会社にFacebookデータが流出する事件が発生しています。
このときの創設者兼CEOであるザッカーバーグ氏をはじめ経営陣の初動対応が遅れたことでFacebookも非難の的になりました。
9月にもFacebookから氏名やメールアドレスなど2900万人分の個人情報が盗まれ、12月には680万人分の写真データが漏洩しています。
1年間にこれだけスキャンダルがあると、確かに企業体質が疑われても不思議ではありません。
その悪印象が拭えぬなかでの仮想通貨開発となれば、リブラ絡みのトラブルが発生したときにまともな対応ができるのかとの意見があっても驚かないでしょう。
まとめ
Facebookから開発された仮想通貨リブラは、「第二のビットコイン」と呼ばれるほど注目を受けていますが、アメリカを中心に各国政府からの批判も多いのが現状です。
背景としてFacebookの相次ぐ情報漏洩スキャンダルによる悪印象が考えられます。
元々仮想通貨業界では、取引所へのハッキングで仮想通貨が流出するなどの事件が世界中で数多く発生しています。
リブラの参入を喜ぶ人もいるようですが、セキュリティ面でトラブルがないか不安に思う人も多いでしょう。
こうした風潮に対し、マーク・ザッカーバーグ氏率いるFacebookがどういった答えを出すのかが注目されます。