オンチェーン分析によると、ビットコインの送金量は2024年5月中旬以降、50%以上減少している。これは、2020年3月のコロナ禍直後以来の大幅な減少幅であり、投資家の取引意欲が大きく低下していることを示唆している。
送金量減少の背景には、複数の要因が複雑に絡み合っている可能性が高い。 以下、独自取材と分析に基づいて、5つの主要な要因を深掘りしていく。
目次
1. 強気相場終焉による利益確定と新規投資控え
史上最高値を更新したビットコイン価格は、その後下落トレンドに入り、
2024年6月には4万ドル台まで下落した。
強気相場が終焉を迎えたことで、投資家は利益確定のために売却を行い、送金量も減少した。
さらに、新規投資家も市場参入を控えるようになっている。
調査会社CryptoQuantによると、2024年6月のビットコイン新規アドレス数は前月比30%減少している。
これは、強気相場特有の「FOMO(Fear Of Missing Out:逃したくない症候群)」による新規参入が止まったことを示唆している。
2. リスク回避によるポートフォリオ調整
金利上昇や景気後退懸念など、世界経済の不透明感が高まっている。
こうしたリスク回避の動きから、投資家はリスク資産である仮想通貨を売却し、
債券や金などの安全資産へポートフォリオを調整している可能性がある。
特に、機関投資家はリスク管理を重視するため、市場環境悪化の影響を受けやすい。
調査会社Grayscaleによると、2024年6月の機関投資家向けビットコインファンド純流入額は前月比80%減少している。
3. マイニング報酬半減の影響とマイニング企業の経営悪化
2024年4月にビットコインのマイニング報酬半減イベントが発生した。
これにより、マイニングの採算が悪化し、マイニング企業がビットコインを売却している可能性がある。
調査会社Arcane Researchによると、2024年6月のビットコインマイニング企業の収益は前月比50%減少している。
さらに、マイニング企業の中には経営破綻に追い込まれるところも出てきている。
4. 規制強化による市場への不透明感
各国政府は、仮想通貨市場に対する規制強化を検討している。
特に、中国ではマイニング活動に対する規制が強化されており、これがビットコイン送金量減少の一因となっている可能性がある。
規制強化は、市場全体の不透明感を高め、投資家のリスク回避心理を助長している。
5. テザリング(USDT)発行量の減少
テザリング(USDT)は、世界最大規模のステーブルコインであり、
ビットコイン取引において重要な役割を果たしている。
しかし、最近になってテザリングの発行量が減少しており、
これがビットコイン送金量減少に影響している可能性がある。
テザリング発行量の減少には、規制強化や資金流出などの要因が考えられる。
ビットコイン送金量の激減は、市場の勢力低下を示す重要な指標の一つである。
しかし、短期間の送金量減少だけで市場全体を判断するのは早計だ。
今後、以下の点に注目する必要がある。
- 送金量減少が長期化するかどうか: 短期的な要因による一時的な減少なのか、長期的なトレンドなのかを見極める必要がある。
- ビットコイン価格の動向: ビットコイン価格が再び上昇に転じれば、送金量も増加する可能性がある。
- 機関投資家の動向: 機関投資家が仮想通貨市場に参入し続けるかどうかは、市場全体の活力を左右する。
- 規制当局の動向: 規制当局がどのような規制を導入していくのか、市場への影響を慎重に判断する必要がある。
- マイニング企業の経営状況: マイニング企業の経営状況が改善するかどうかは、ビットコイン供給量に影響を与える。