要点
・中国政府は2022年に中国で開催される冬季オリンピックの場で、デジタル人民元が活用される事を期待しています。
中国がデジタル人民元のテストに成功
South China Morning Post「Stop offering ‘untrusted’ Chinese apps like TikTok and WeChat, Washington urges US tech companies」
中国の中央銀行である中国人民銀行(People's Bank of China=PBoC)によって開発されている 中央銀行発行のデジタル通貨(Central Bank Digital Currency= CBDC)が、進行中のパイロットプログラムの中で、300万件を超える試験的取引を実施し、11億元、日本円でおよそ173億円以上の資金移動のためにすでに使用されていると報告しました。
PBoCの副総裁であるファン・イーフェイ(Fan Yifei)氏によると、深セン、蘇州、雄安の3都市でデジタル通貨を使用した313万件の取引が実施されたと明かしています。
サウスチャイナモーニングポストが報じた内容によると、10月5日(月曜)に開催されたSibosの銀行および金融会議で発表され、パイロットの進捗状況は前向きな進捗状況にあり、請求書の支払い、輸送、政府サービスなど、6,700を超えるユースケースでデジタル人民元が実装されていることを確認したことを明かしています。
※画像引用:サウスチャイナモーニングポストより
ファン氏によると、デジタル通貨は、顔認証やタップアンドゴー取引、バーコードスキャンなど、複数の支払い方法で使用されているとのことで、PBoCは、デジタル人民元を将来の重要な金融インフラと見なしていることを明かしています。
PBoCは、COVID-19パンデミックの治療に関与した医療従事者などを中心に約5,000人に対して人民元を付与したことを明かしました。
PBoCは、中国経済の変革を早めるために独自のデジタル人民元を開発しており、中国経済をキャッシュレス社会に向けてさらに推進させるのに役立つと期待されています。
中国政府は、デジタル通貨の開発をしっかりと把握し、国の経済の変革を促進するためのツールとしてそれらを使用したいと考えており、デジタル通貨のテストは提案されたデジタル通貨がこの段階で他国の中央銀行よりも進んでいることでも世界各国から一目置かれています。
パイロットプログラムでは、デジタル人民元ユーザーが113,300を超える個人用デジタルウォレットと約8,000の企業ウォレットを作成していると報告されています。
人民元のデジタルテストには、中国建設銀行、中国銀行、中国工商銀行、中国農業銀行の4つの主要な国営銀行が参加しているとのこと。
デジタル人民元は、2022年の冬季オリンピックでもテストされる予定で、サウスチャイナモーニングポストは、アントグループのアリペイ(Alipay)およびテンセントホールディングス(TencentHoldings)のウィチャットペイ(WeChatPay)のユーザーによる支払いの増加に後押しされ、モバイル決済の世界最大の市場をすでに誇っていると報じています。
上海銀行前会長で中国投資公社の副書記であるファン氏は、仮想通貨が中央銀行の印刷能力に異議を唱える可能性があるとかつて警告しています。
同氏は、デジタル通貨はPBoCにリアルタイムで経済活動を追跡する能力を与えるだろうと述べました。
DCEP、デジタル人民元について
デジタル通貨は一般的にCBDCと呼ばれていますが、デジタル人民元は、デジタル通貨/電子決済を指すDigital Currency Electronic Paymentの頭文字を取って「DCEP」とも呼ばれています。
中国は2014年にデジタル通貨研究所を設立した際、仮想通貨に関連した技術を使って決済を近代化させ、ドル基軸の国際貿易ネットワークを回避し、地政学的パワーを発揮しようとしているとして、アメリカなどの経済的先進国から強い危機感を与え続けています。
仮想通貨から法定通貨を守り、通貨主権を守るためには、中央銀行が新しい技術で紙幣をデジタル化することが欠かせないとファン副総裁はデジタル人民元の重要性を強調しています。
デジタル人民元は、観光での活用も検討されており、2022年に北京で開催される冬季オリンピックでの試験導入も計画されていると中国人民銀行は今年4月、深セン、蘇州、雄安、成都での試験導入を発表した際に明らかにしています。
また、試験導入は北京、長江デルタ地域、天津市、河北省、広東省、香港、マカオにも拡大しており、中国商務部は今年8月、将来的には同国中部と西部にも展開する可能性があると述べています。