要点
・世界で一歩リードをしてきた中国CBDCプロジェクトが、さらにリードし、現実味を帯びてきました。
中国・深セン、5万人にCBDCを抽選で配布
中国広東省深セン市が深センの羅湖区とPBoC(中国人民銀行)と協力し、計1000万元(約1億6,000万円)相当分のCBDC(Central Bank Digital Currency=中央銀行デジタル人民元)、通称“赤い封筒”を付与すると発表したことを、現地メディアの新浪財経 https://finance.sina.com.cn/blockchain/coin/2020-10-09/doc-iivhvpwz0960147.shtml が報じています。
新浪財経によると、香港のマカオグレーターベイエリアの建設を促進するため、地元の消費促進政策と併せて、深セン市人民政府と中国人民銀行によってデジタルRMBの赤い封筒プロジェクトを開始したとのことです。
この赤い封筒プロジェクトは、試験運用の一例として、スマホアプリなどでアプリをダウンロードして利用でき、深セン市に住む市民の中から、抽選で5万人に“赤い封筒(=デジタル人民元)”が配布される予定です。
赤い封筒プロジェクトの内容
赤い封筒プロジェクトによって配布されるデジタル人民元は、一人当たり200元、日本円で約3,000円相当で、深セン個人用デジタル人民元専用ウォレットに分配され、市内の指定店舗にて利用可能とのこと。
全ての市民がデジタル人民元が入手できるというわけではないとしており、10月9日からオンライン申し込みが開始されています。
同テストプロジェクトは、深セン羅湖(らこ)地区内のケータリングやスーパーマーケット、ガソリンスタンド、地下鉄、デパートなどの幅広い分野で利用でき、10月12日の18:00から10月18日の24:00までデジタルRMBシステムの変換を完了した3,389店の指定店舗内で利用できるとしています。
ただし、同プロジェクトによって規制されているルールに従い、万が一、赤い封筒を他の人に譲渡していたことが発覚したり、故人の銀行口座へ資金を預金していたことが発覚した場合、当選資金は市によって回収されるとのことです。
また、使い切れずに期限が終了した場合も残りの資金が回収される仕組みになっているとのことです。
実用化に向けて本腰を入れ出した中国
10月に入り、中国のCBDCプロジェクトは一気に現実味を帯び始めています。
10月5日、ファン・イーフェイ(Fan Yifei:範一飛)中央銀行副総裁が、DCEP(Digital Currency Electronic Payment=デジタル人民元)のパイロットプログラムで約170億円以上をすでに国内で資金移動させ、成功させていたことを明らかにしており、世界に先駆けて中国が世界初のデジタル通貨を発行する現実味が増しています。
新浪財経の報道によると、中央銀行が発行するデジタル通貨について、中国ではすでに5年近く研究と準備がすすめられており、その機能と属性は、形式がデジタルであることを除き、紙の通貨と似ていると公表しています。
中国政府は将来的に、中央銀行のデジタル通貨を銀行口座、アリペイ(Alipay)、ウィチャット(WeChat)ウォレットなどに保管出来たり、既存の銀行ATM機から実際に現金を出し入れできるようにしていきたいと考えていると報じています。
デジタル人民元の拡大は段階に計画されており、最初の段階として、複数決済方法とアカウント管理機能をサポートし、主な追加機能として、モバイルチップ支払いのデュアルオフライン支払い方法を実施。
第二段階で、ある程度の匿名性を確保するため、携帯番号やメールアドレスを登録することで、追加された4種類のアカウントを完成させることを目標にしています。
さらに、最終段階として中央銀行のデジタル通貨を賃金の支払いや公共サービス料金の支払いを目指しており、中国内の4大主要銀行から開始させ、徐々にインターネット企業や事業者に拡大するという、段階的なプロモーションを改革しているとのことです。
北京大学国立開発研究所副学部長の黄義平氏によって、中央銀行の限られたデジタル通貨が現在のデジタル金融情勢にどのように影響するかを詳細に観察する必要があると指摘されているものの、大奥の中国内企業がデジタル人民元プロジェクトに参加しており、今後、中国に追随したいと考えている海外のある種の手本になることは間違いなさそうです。