要点
・同会議では、デジタル人民元だけではなく、Facebook社が計画するLibraステーブルコインに対し、名指しで批判は避けたものの、デジタル人民元同様、けん制しています。
G7が中国CBDCをけん制
大きく差をつけて世界より一歩先へとCBDC開発を突き進んでいた中国に、ここへきて世界各国からけん制されました。
10月13日に開催された主要7カ国(アメリカ、カナダ、日本、ドイツ、フランス、イタリア、イギリス)、G7先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議の場で、CBDC(Central Bank Digital Currency=中央銀行発行デジタル通貨)に関する共同声明を発表し、その中で、デジタル人民元を開発する中国をけん制しました。
今回のG7によるけん制は、中央銀行発行デジタル人民元を巡って、日本やアメリカ、ヨーロッパが中国の開発速度の突出ぶりに警戒を強めていることが要因となっています。
その上で13日夜にG7によって先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議でまとめられた共同声明を発表しました。
デジタル人民元の懸念材料とは
財務相・中央銀行総裁会議でまとめられた共同声明の中には、CBDC発行の条件も盛り込まれており、CBDCの発行条件として、透明性、健全な経済政治、そして法の順守などが挙げられました。
最も懸念されているのが個人データの取扱いで、デジタル人民元を利用すると、取引データが中国側当局に筒抜けになることで、現時点の中国政府の監視体勢強化を踏まえると、国家体制維持や国民の行動把握に利用される恐れがあると指摘されています。
当ビットコイン谷でも特集記事『中国CBDC(デジタル元)が300万件の試験的取引で11億元の移動に成功』で紹介したように、デジタル人民元はすでに300万件の試験的取引を実施し、11億元の資金移動に成功しています。
また、『中国・デジタル人民元プロジェクト、深セン市民5万人に抽選配布』の特集記事で報じた様に、深セン市で市民の中から抽選で5万人にデジタル人民元を期限付きながら付与。
一般市民の利用でどのように資金が移動するのかを実際の動きを見ながらシミュレーションする実験プロジェクトを実施するなどしています。
中国政府は、2022年までにデジタル人民元を実用化させ、同年開催予定の北京冬季五輪で実際に利用する計画を立てていることが各国メディアなどでも大きく報じられています。
このようにデジタル人民元実用化へと急ぐ中国をけん制した形だか、実際には中国政府に対してどこまでG7によるけん制が届くかは不透明です。
なお、日本の麻生財務大臣はG7先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議の後に行われた記者会見で
中国さん、あんた透明性は大丈夫?という話だ。どなたでも条件を満たしていない限りはだめだと理解してほしい。
と語った。
また、黒田東彦日銀総裁も記者会見の場で、
G7以外の国もCBDCを発行するならば透明性などを備えた形で発行する必要がある。そうでないと国際金融システムに影響が出かねず、問題が生じる。
と注意喚起しました。
G7はLibra(リブラ)にもけん制
G7先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議の場にて、けん制されたのは中国が実用化を急ぐCBDC・デジタル人民元だけではありません。
アメリカ・カリフォルニア州に本拠を構える世界最大手ソーシャル・ネット・ワーキングサービスを提供するフェイスブック社が開発を予定しているLibraに対してもけん制しています。
デジタル決済が金融サービスへのアクセスを改善し、非効率性とコストを削減する可能性がある。
これらのような決済サービスについては、財政の安定や消費者保護、プライバシー、課税、サイバーセキュリティを損なうことがないよう、適切に監督および規制されなければならないと声明草案の中で述べられていると報じています。
また、適切な監督がない場合、ステーブルコインはマネーロンダリング、テロリスト、拡散資金調達に使用され、市場の完全性、ガバナンスを危うくし、法的確実性を損なう可能性があると述べ
G7は、適切な設計と適用可能な基準を順守することによって、関連する法律、規制、監視の要件に適切に対処するまで、グローバルな安定コインプロジェクトの運用を開始してはならないと主張し続けていきます。
と、Libraへの名指しは避けたものの、G20金融安定理事会が、Libraステーブルコイン提案をきっかけに、規制のための一般的国際的アプローチについて4月に10の勧告を発表していることからも、Libraへのけん制とみなされています。
G7では、デジタル人民元が中国国内を飛び出し、世界駅に普及して存在感を高める事を警戒しています。
デジタル人民元が相対的に基軸通貨のドルの地位が低下させる恐れを含んでいることから、各国は普遍的な枠組みを構築させ、足並みを揃える重要な局面に差し掛かっていると言えます。