要点
・日銀の神山一成決済機構局長は、CBDCを発行するにあたって、いくつかの懸念材料が残っている事を明かしています。
デジタル円は2021年度中に第2段階へ
世界の政府や中央銀行がCBDCへ向かうなか、実用化へ向け、すでに一般利用における実用実験段階に突入した中国を筆頭に、いくつかの国でCBDC発行を目指している国が登場している中、日本では、日本銀行(※以下、日銀と表記)の黒田東彦総裁が10月12日に、デジタル円の実証実験を2021年の春にも開始すると表明しました。
ただし、日本のスタンスとして、現時点での発行計画はなく、万が一に備えて必要性や実現の可能性などを探るための実証実験であることを強調しています。
DeFiブームが一定の落ち着きを見せ始めている今、仮想通貨市場で最も注目されているのがCBDC発行に関する各国の動向と言えます。
日銀の神山一成決済機構局長が15日に、CBDC(=Central Bank Digital Currency中央銀行の発行するデジタル通貨)を発行する場合、民間銀行の現金預金からのシフトを抑制するために発行額や保有額に上限を設けることも選択肢の1つだと語った事を大手ロイター通信が報じました。
10月9日付で発表された「中央銀行デジタル通貨に関する日本銀行の取り組み方針」の中で日銀は、CBDCの発行検討は「ありそうもない」と何度か述べています。
その一方で日銀は、今後、CBDCのニーズも急速に高まる可能性があり、環境変化に的確に対応できるよう、しっかり準備しておくことが重要だと考えている事を明かしており、2021年度中にも実証実験を開始させたい意向を明らかにしました。
ビットコイン谷の「日本銀行、万が一に備えて2021年のデジタル通貨トライアルの準備中」でお伝えしたように、日銀では2021年度に開始する要諦の実証実験フェーズ1でシステム的な実験環境を構築し、決済手段としてのCBDCの中核をなす、発行、流通、還収の基本機能に関する検証を実施する予定です。
日銀の描くCBDC実証実験プロセス
今回、日銀の神山一成決済機構局長は15日に明かした実証実験の第2段階とはこのフェーズ1ノ次の段階で、フェーズ2にあたります。
フェーズ2では、フェーズ1で構築された実験環境に、CBDC周辺機能を加え、実現の可能性などが検証される予定です。
また、フェーズ2が終了すると次の段階としてパイロット実験が実施される予定です。
神山決済機構局長はすでにフェーズ1の準備に取り掛かっている事を明らかにしているものの、あくまでも日銀内における検討段階であり、現時点では政府を含めた日本国としての判断ではない事を強調しており、議論の段階でもない現状だと語っています。
CBDCを検討するにあたっての懸念材料
日銀は、CBDCを検討するにあたって
民間の取り組みおよび金融仲介機能に悪影響を与えないことが重要である。
と神山決済機構局長は指摘しています。
その理由として、銀行預金よりCBDCの利便性が高くなると銀行預金が大きく減少しかねず、銀行の信用創造そのものが崩壊する恐れを招くためと考えられる。
さらに、民間預金で金利がつくのに対し、CBDCには金利が付かないルールを設けた場合、金利が上がった際には民間預金に資金が大きくシフトする恐れもあり、民間預金の金利が下がり、CBDCへ預金がシフトした場合、金融システンの安定性に問題が生じる懸念が生まれる事を明かしています。
このような事態を避けるためには、CBDCの発行額や保有額に制限を設けてCBDCへの資金シフトをコントロールし、発行額や保有額に上限を設けることも選択肢の中にあり、今後、利便性なども含めて慎重に検討していくと語っています。