要点
・しかし、日本銀行ではCBDC発行問題について、真剣に検討していることが分かりました。また、2021年中にはトライアルの計画を予定していることもわかりました。
・発行予定はないものの、日本銀行がCBDCのトライアルを検討している背景には、近隣諸国が独自のCBDC計画を進めていることが少なからずあるとみられています。
日本銀行が2021年にCBDC検討か
日本銀行(※以下、日銀と表記)は、中央銀行が発行するデジタル通貨(CBDC= Central Bank Digital Currency)の発行計画は当面ないとしているものの、万が一に備えて準備を進めていることが分かりました。
19ページに渡るレポート『中央銀行デジタル通貨に関する日本銀行の取り組み方針』が本日、瀬式に公表されました。
情報通信技術が急速な進歩を遂げている今、内外のさまざまな領域でデジタル化が進み、それらのスピードを考慮すると、今後、CBDCのニーズも急速に高まる可能性があり、環境変化に的確に対応できるよう、しっかり準備しておくことが重要だと考えていると述べています。
日銀は報告書の中で、CBDCを導入する場合に期待される機能と役割について
・現金と並ぶ決済手段の導入
・民間決済サービスのサポート
・デジタル社会にふさわしい決済システムの構築
以上の3点を挙げたほか、基本的な特性については
・ユニバーサルアクセス
・セキュリティ
・強靭(じん)性
・即時決済性
・相互運用性
の点を挙げています。
日銀側は現段階での発行検討について否定
CBDCの発行を検討する条件は「ありそうもない」と何度か述べており、現段階で日銀がCBDC発行の検討はしていない事を明確にしており、2021年4月に開始される可能性のある作業には2つの概念実証フェーズがある事を明らかにしています。
世界の政府や中央銀行のほとんどで独自デジタル通貨構築を検討している今、最も早くCBDCを発行すると言われている中国で、世界最大規模のデジタル通貨プロジェクト「DCEP(Digital Currency Electronic Payment=デジタル人民元)」と呼ばれる独自のバージョンをすでに試しています。
日本の国際問題担当副財務相である岡村憲司氏は木曜日に開催されたフォーラムで、「デジタル人民元は比較的速いペースで動いている。おそらく彼らは先発者の優位性を利用することを目指している。」と述べました。
続けて同氏は、中国が初のCBDCを発行することは、基準を設定する事につながりかねず、この様な事態は日本が“恐れるべきである”と述べたことをロイター社が報じています。
レポートでは、CBDCについて詳しく解説するとともに、日銀は、流通現金が大幅に減少する可能性は低いと考えていますが、2021会計年度の初めから、デジタル通貨の2つの概念実証フェーズを展開していく予定で、世界銀行は、事態をさらに強化する必要があると判断しています。
日銀の提示する実証実験案とは
日銀は、これまでのようなリサーチ中心の検討にとどまることなく、実証実験を実施し、より具体的で実務的な検討を行っていくと表明しています。
まずは、概念実証PoC(Proof of Concept)プロセスを通じて、基本的な機能や具備すべき特性が技術的に実現可能かどうかを検証し、そのうえで必要と判断された場合、パイロット実験の要否について検討すると今後について具体的に述べています。
■概念実証
・フェーズ1
フェーズ1では、システム的な実験環境を構築し、決済手段としてのCBDCの中核をなす、発行、流通、還収の基本機能に関する検証が行われます。
・フェーズ2
フェーズ1で構築された実験環境に、CBDC周辺機能を付加し、実現の可能性などが検証されます。
概念実証フェーズ1と2が終了した場合、次の段階としてパイロット実験が実施されます。
必要と判断された場合、民間事業者や消費者がパイロット実験には実地に参加すし、パイロット実験を行うことも視野に入れて検討されています。
また、概念実証フェーズ1は、早ければ2021 年度の早い時期にも開始することを目指していると明らかにしています。
日銀側が考慮すべきポイントとして挙げている
・物価の安定や金融システムの安定との関係
・イノベーションの促進
・プライバシーの確保と利用者情報の取扱い
・クロスボーダー決済との関係
以上の懸念材料が解消された際、日銀がどのように動き出すのか、来年実施される予定の概念実証フェーズ1の結果によってより方向性が明確になっていくとみられます。