要点
・掲載された記事の中でラガルド氏は、Facebook社が計画しているLibraプロジェクトにも言及しており、ヨーロッパの競争力と技術的自律性にリスクをもたらす可能性があると指摘しています。
欧州中央銀行総裁の発言が雑誌に掲載される
欧州中央銀行のクリスティーヌ・ラガルド(Christine Lagarde)総裁は11月30日(月曜)、雑誌L’ENA hors les mursのインタビューの中で、ステーブルコインが広く採用されることになれば「金融の安全を脅かす」可能性があると述べた記事が掲載されました。
デジタル時代へと突入し、お金の性質だけでなく、商品やサービスの性質も急速に変化している今、デジタル化と技術の進歩は、社会のすべての分野を変革し、非物質化のプロセスを加速させている。そのような中で、現金以外の支払いが増え続けており、ユーロ圏では、昨年8.1%増加し、980億ユーロが現金以外で支払われていると述べています。
これらの取引のほぼ半分はカードで行われ、続いてクレジット送金などによるものではあるものの、コロナウイルスパンデミックは、オンライン決済の急増と非接触型決済への移行に拍車をかけ、デジタル化傾向を加速させました。
このような背景から、デジタル決済手段の需要を満たすため、ユーロ圏では、ユーロシステムの監督メカニズムにより、商業銀行と決済サービスプロバイダーが効果的かつ安全になっており、私的資金として挙げられているCBDC(中央銀行発行デジタル通貨)への自信を覗かせています。
CBDCに対して強気の姿勢を強調するラガルド氏
掲載された記事の中でもラガルド氏は、仮想通貨やステーブルコインなどのライバルに陰を投げかけながら、デジタル資産の価値は法定通貨に固定されていることもあり、デジタルユーロに対して強気な主張をしています。
同氏は、仮想通貨の主なリスクとして、仮想通貨ユーザーがプラスと見なす機能であると述べ、仮想通貨は純粋にテクノロジーに依存しており、識別可能な発行者や主張はありません。
その結果、仮想通貨は流動性、安定性、信頼性の欠如に苦しんでおり、お金のすべての機能を果たしていないと述べています。
ステーブルコインはこれらの問題を解決しようとしており、支払いにさらなる革新をもたらす可能性があることに留意しつつ、“深刻なリスク”をもたらすとラガルド氏は述べています。
ラガルド氏の発言に関してECBの責任者は次のように語っています。
ステーブルコインを価値のあるストアとして使用すると、銀行預金がステーブルコインに大幅にシフトする可能性があり、銀行の業務や金融政策の伝達に影響を与える可能性があります。
さらにラガルド氏は、ステーブルコイン発行者が固定値を保証できない場合、もしくは損失を吸収できないと見なされた場合、実行をトリガーする可能性もあると述べました。
Facebook社が2019年6月に発表したLibra(リブラ)プロジェクトの様に実現の可能性が高いと思われるものの中で、ラガルド氏はステーブルコインについて以下のように述べています。
特にグローバルテクノロジー企業に支援されたものは…、ヨーロッパの競争力と技術的自律性にリスクをもたらす可能性がある。彼らの支配的な立場は、競争と消費者の選択を害し、データのプライバシーと個人情報の悪用に対する懸念を引き起こす可能性があります。