仮想通貨TITANが、半日足らずで40億分の1まで価値が落ちたことで話題になっています。
このTITANは、保有しているだけで高金利を得られることから、仮想通貨ユーザーの間で現代の錬金術だと言われておりました。
しかし、オラクル機能に欠陥があった為、負のサイクルによって延々価格が下がり続ける事態に陥ることとなりました。
現代の錬金術と言われたIRON
6月上旬から中旬にかけて、ポリゴンネットワークでリリースされていたIRON FinanceというDeFiが仮想通貨界隈で爆発的な人気を博しました。
その理由は、ステーブルコインであるUSDCと、アルゴステーブルコインのIRONを預けることで年利700%もの金利を受け取ることができたからです。
当時、他に利率の良いDeFiが少なかったことや、リスクの少ないステーブルコインで高金利を受け取れるということもあり、急激に認知が広がりました。
そして、このDeFiの何よりすごいところは、人が増えれば増えるほど利率が上がることでした。
このIRON Financeではアルゴステーブルコインのほかに、TITANという独自の通貨を発行していました。
USDCとIRONをセットで預けることで、このTITANを配当金として受け取ることができたのです。
つまり、USDCとIRONを預けて貰える年利700%というのは、受け取ったTITANを売った場合、年利700%のリターンになりますよということです。
このTITANは、IRONが発行されればされるほど価格が上がる仕組みになっています。
その為、IRON Financeに参加する人が増える度に、TITANは右肩上がりの成長を見せていました。
一夜にして崩壊したTITAN
6月17日、前日まで60ドル付近を前後していた仮想通貨TITANが、一夜にして40億分の1まで価値が落ちる事態に陥りました。
この影響で、資産を失ったユーザーが続出。
SNSは阿鼻叫喚に包まれることとなりました。
しかし、何故たった半日で価格がこれほどまでに落ちたのでしょうか。
ユーザーらは当初、運営が保有していた通貨を売ってダンプしたのではないか?ハッキングに遭ったのではないか?と様々な憶測を立てました。
ですが、本当の原因はIRONの仕組み自体にあったのです。
というのも、IRONはUSDCとTITANを混ぜ合わせて、常に1ドルを維持するよう設計されていました。
IRONを分解した際にも同様に、ステーブルコイン75%+TITAN25%で時価1ドルが手元に戻ってくるよう設計されていた為
IRONの価格が1ドルを下回った場合、分解目的でIRONの買い圧が発生するようになっていたのです。
つまり、IRONの価格が0.9ドルになった時、IRONを購入して分解すると1ドル相当のUSDCとTITANが手に入ったので、差額の0.1ドル分が儲けとなります。
そうなると、みんながIRONを購入して分解しようとするので、自然とIRONが1ドルに戻るという仕組みでした。
一度崩れたら止めることはできなかった
この仕組みは実に合理的で、崩壊する余地が無いと思われていました。
しかし、これはみんながIRONを信用していてTITANに価値がある状態だからこそ実現していた仕組みだったのです。
6月17日の深夜頃、突如としてIRONが崩壊し始めた時、人々はこぞってIRONの分解を始めました。
本来ならば、分解をする為にIRONが購入されるので、元に戻るはずだったのですが、この時は違いました。
あまりにもIRONの売り圧が強かったのです。
その為、みんなが延々とIRONを分解することとなり、大量のTITANが発行されてしまいました。
そうなると、TITANの価値はみるみる落ちていき、USDCとIRONでTITANを掘る旨味もなくなってしまいます。
すると、更にIRONの価値は下がり続けて、また延々TITANが売られるという負のループが生まれ、抜け出すことができなくなりました。
このように、一度悪循環に陥ると元に戻れない仕組みだった影響で、TITANは半日で価値が無くなってしまったのです。
うまい話には裏がある
今回の一件で、誰でも儲かるようなおいしそうな話には必ず裏があることが分かりました。
特に今回は、大物インフルエンサーが大々的に宣伝していたこともあり、一般投資家が信用しやすくなっていたようです。
しかし、DeFiは基本的に、誰かが利益を得たら誰かが損するシステムとなっているので、みんなが儲かるということはあり得ません。
そういったことを頭に入れておかなければ、今回のように大きな損失を出してしまうことになるでしょう。