最近複数の大手日本企業が、ブロックチェーンを活用した実証実験の発表を行なっています。そこで、今回は大手企業が発表した実証実験について、いくつか紹介していこうと思います。
要点
目次
三井住友信託が大手13社と、相続手続きによる実証実験開始
三井住友信託銀行は、遺産相続に関する手続きにブロックチェーン技術を使った実証実験を、2月中にはじめることを日本経済新聞が報じました。
本実験では、相続手続きのうち、遺言執行手続き、残高証明発行、確認等について、ブロックチェーンを活 用して、参加金融機関が必要書類のデジタル化・共有化による一連の業務を実施することで、手続き期間の短 縮化を検証します。
(三井住友信託銀行/ニュースリリース/2020/2/4)
預金や株式などを電子管理することで、従来の手続き時間を短縮し、業務の効率化を図りたい狙いのようです。従来では4~5ヶ月程を必要とする手続きですが、ブロックチェーン技術を導入することで約半分ほどに抑えられる目論見のようです。
この実証実験には、三菱UFJ銀行やみずほ銀行、野村證券など13社が参加する予定です。
三井住友信託は、不動産ビジネスでの実証実験も継続中
(発表資料より引用)
三井住友信託は、2019年1月から不動産ビジネス領域でのブロックチェーンの実証実験も行なっており、改ざんが困難なデータ記録の仕組み構築が確認されています。
この結果を踏まえて、新たに8月から「不動産ビジネスにおける情報の蓄積と、活用を促進するためのデジタル技術(ブロックチェーン)を活用した実装実験」を開始しています。
住友生命が、生命保険の自動給付による実証実験開始
住友生命は、生命保険の給付金請求に関する手続きを簡素化するために、ブロックチェーン技術を活用した実証実験を2月12日~3月下旬の間で実施することをアナウンスしました。
本実証実験を踏まえ、今後ブロックチェーン技術を活用した給付金自動請求の仕組みによって、生命保険請求手続きにおける従来の請求書や診断書等の取り寄せが不要となり、医療機関・保険会社とのやり取り等が大幅に簡素化され、利便性が格段に向上することが期待できます。
(住友生命/ニュースリリース/2020/1/31)
従来の給付金請求モデルでは、病院や患者、保険会社が個別に煩雑なやりとりを行う必要がありましたが、ブロックチェーン技術を利用し、複数の期間で情報を共有することで、個別の手続きが不要になることが想定されています。
この実証実験には、TIS株式会社や北原病院グループが協力し、金融・保険の分野で利用されているR3社の「Corda(コルダ)」が利用される予定です。
ブロックチェーン技術は、多くのビジネス領域で活用されている
今回紹介した2つの実証実験以外にも、多くのビジネス領域でブロックチェーン技術を採用しようとしている流れがあります。
例えば三菱UFJグループは、MUFGコインの実用化を目指す方針を決めていますし、海外で見ると、「ルイ・ヴィトン」などのブランドを抱えるLVMHは高級品の真贋を証明するためのプラットフォームを構築しています。
まとめ
ブロックチェーンと聞くと、仮想通貨や取引所のことを想像する方も多いですが、技術自体に注目し、水面下で既存ビジネスに適用しようとする実験が多くとり行われています。
ブロックチェーンは、本質的にデータの改ざんが困難なことを信頼の担保としており、通貨や契約、追跡や管理などを新たなレベルに引き上げることが期待されています。
今後日本企業がどのような形でブロックチェーン技術を受け入れて逝くのか、動向に注目していきたいですね。