シンガポールで中央銀行の役割を担うMAS(シンガポール金融管理局)は、23日のプレスリリースで仮想通貨規制案に関する最終回答を明かしました。
主に個人向け仮想通貨投資サービスへ、強い規制が設けられる方針です。
新規制は2024年半ばから段階的に施行されます。
シンガポールの仮想通貨規制方針について、詳しく見ていきましょう。
要点
シンガポールの仮想通貨規制方針の概要
MASは仮想通貨規制案に関する回答書を、23日に公開しました。
それによると個人向けを中心に、仮想通貨サービスの規制を強める方針です。
仮想通貨によるギャンブル的な投資を防ぐためとされます。
実際に仮想通貨投資で大きな損失を被り、生活に影響が及ぶケースもあります。
こうしたリスクを防ぐために、MASは規制強化へ乗り出したのでしょう。
たとえばDPTサービスプロバイダーに対して、以下の義務を課す方針です。
・デジタル資産上場に関して基準やポリシー、手順を公開する
・顧客のクレームや紛争解決に関するポリシーや手順を定める
個人投資家の保護のため、MASはDPTサービスプロバイダーに以下も求めます。
・仮想通貨取引へのインセンティブ提供の抑止
・個人投資家に仮想通貨融資やレバレッジ、証拠金取引などを提供しない
・仮想通貨取引に関するクレジットカード決済を受け入れない
規制方針の内容によると、融資やレバレッジが認められないため、実質的に現物取引しか提供できないでしょう。
また顧客へのリスク認識のチェックや、クレジットカード決済導入の禁止などもあり、強固な規制内容がうかがえます。
背景は2022年の仮想通貨事業破綻ラッシュ
MASの規制強化の背景は、2022年の仮想通貨事業の破綻ラッシュです。
この年の前半では、仮想通貨のテラやルナの暴落により、さまざまな企業が破綻に追い込まれました。
さらに後半ではFTXがずさんな顧客資産管理により、経営破綻しています。
事業破綻時に企業は負債を抱えますが、顧客も多大な損失を受けます。
MASは顧客を非常事態から守るために、規制強化へ乗り出したのでしょう。
たとえば2023年7月には、MASが投資家保護措置を明かしています。
この措置では、仮想通貨の事業者に顧客資産の分別管理や、カストディ部門の独立などを求める形です。
こうした背景もあり、MASは仮想通貨規制の整備を、急ピッチで進めています。
シンガポールの方針では一部規制緩和も
一方MASは、一部規制緩和の方針も明かしました。
認定投資家の資格に関して、資産額の10%まで仮想通貨を含んでもよいと認めています。
現地で認定投資家になるには、最低でも200万シンガポールドル(約2.2億円)の資産額が必要です。
MASの方針では、このうち20万シンガポールドル(約2200万円)分を仮想通貨として計上してもよいとされます。
以上から仮想通貨ユーザーにとって、認定投資家へのハードルがやや低くなったでしょう。
まとめ
シンガポールは2024年半ばから、段階的に仮想通貨規制を強める方針です。
とくに個人投資家向けのサービスが、規制の中心になっています。
レバレッジ取引やクレジットカード決済を認めないなど、関連サービスの制限が厳しいといえます。
MASの規制強化の背景は、仮想通貨事業の相次ぐ破綻です。
企業とのトラブルから投資家を守るために、規制強化を急いでいるのでしょう。
一方認定投資家の資産額基準ついて、一部資産額を仮想通貨として計上できることのように、規制緩和の部分も見られます。
果たしてシンガポールでは、最終的にいかなる形で、仮想通貨規制がまとまるのでしょうか。