当サイトでも既報のとおり、Zaifの元運営会社であったテックビューロが22日に廃業を表明しました。
国内で初めて起きた仮想通貨交換業者の廃業は多くの仮想通貨ユーザーを動揺させているでしょう。
一部報道はテックビューロの廃業要因としてZaif運営時の仮想通貨流出被害をあげています。
しかしコインチェックのように、過去に大規模な仮想通貨流出被害を受けながらも新しい体制で信頼を回復した仮想通貨交換業者もあります。
ハッキング被害から立ち直ったコインチェックと、立ち直れなかったテックビューロの違いはどこにあるのでしょうか。
要点
ハッキング被害から信頼を回復した仮想通貨取引所の例を紹介し、回復できないまま廃業したテックビューロ社との違いを解説します。
過去にハッキング被害から回復したコインチェック
ハッキング被害から立ち直った仮想通貨取引所に、コインチェックがあります。
かつてないビットコインバブルに世間が注目していた2018年1月26日、コインチェックはハッキングを受け、ネムを中心に約580億円相当の仮想通貨が流出する被害に見舞われました。
この結果コインチェックは金融庁により業務改善処分を受け、警視庁の捜査も入り、自民党からヒアリングを受けるなど世間を騒がせることになります。
当然事件発覚後は取引をはじめすべてのサービスを停止する事態となりました。
仮想通貨はまだまだ社会的に歴史の浅い分野です。これだけの大事件で信頼を失ってしまうと、再開への道のりはかなり厳しいことが想像できるでしょう。
しかしコインチェックは事件を乗り越え、現在は通常通りの運営を続けています。
マネックスグループの買収を機に復活
コインチェックは事件後の2018年4月16日にマネックスグループの買収を受けました。
セキュリティを含めた管理体制を大幅に見直し、同年10月30日に新規登録および一部上場仮想通貨の入金、取引を再開したのを皮切りに、サービス体制を元通りに戻していきました。
2019年1月11日、コインチェックは事件で取り消されてしまった金融庁からの仮想通貨交換業者認定を取り戻したのです。
また、事件後のコインチェックの対応も信頼回復の要因とされます。
コインチェックは事件直後の2018年1月26日にネムの不正流出を公表しました。同年3月8日に1月29日に続いて2度目の業務改善命令を受け再度記者会見を行い、ネムの補償やセキュリティ強化、経営体制などの見通しについて説明しました。
このように被害者に対し最大限真摯に向き合う姿勢も、後のマネックスグループの救いの手や現在の信頼回復につながったのでしょう。
テックビューロはなぜ立ち直れなかったか
テックビューロはZaifを運営していた2018年9月18日に仮想通貨流出被害に見舞われました。被害額は約67億円相当とされます。
しかし、テックビューロは事件発覚後もホームページ上でコメントを出すのみと限定的な対応に終始し、記者会見を行うこともありませんでした。
またコインチェックが事件発覚から間もなく記者会見などのメディア対応を行ったのに対し、テックビューロは18日にハッキング被害を受けながら、事実を公表したのは20日未明と対応が後手に回っていました。
金融庁から3度にわたる業務改善命令を受けた後、2018年11月22日にフィスコ仮想通貨取引所にZaifの運営権利を譲渡しています。
相応の責任も果たさないまま事業を譲渡してしまうという行動に悪印象を受けたユーザーも多いでしょう。
最終的にテックビューロは信頼回復を果たせないまま、今回の廃業に至ってしまいました。
しかしZaif自体は運営元が変わる形で、現在も活動を続けています。
まとめ
テックビューロは2019年8月22日をもって仮想通貨交換業者としての幕を閉じました。
Zaifを運営していた2018年9月の仮想通貨流出事件をめぐる対応のまずさが悪印象を与え、信頼回復への道を閉ざしたことも考えられます。
同じハッキング被害を受けた仮想通貨交換業者でもコインチェックは事件直後からユーザーやメディアに積極的に情報を発信し信頼回復に努めました。マネックスグループの傘下に入るなど経営体制を大きく見直したことも大きいでしょう。
ハッキング被害を受けた仮想通貨交換業者が立ち直るカギは、事件後の対応への尽力と、経営体制の丁寧な見直しと考えられます。